2020年5月7日木曜日

紙:Paper

とにかく、50歳を過ぎてから複雑系・超複雑系などというやっかいなものに手を出してしまったんで、紙のことなんぞ何も知らない。とりあえず普通に売っている折り紙用で一番サイズの大きい35㎝で、いきなり神谷哲史さんの「カブトムシ」に挑戦して爆死してしまったわけだが、そこから色んな紙を試してみた。


下記はだいたい時系列順になってる。


■模造紙・色上質紙
近所の文具店とかで現物確認出来て、できるだけ大きいものということで購入。「薄口」とか書いてるものを選んだが、折紙専用紙と比べるとだいぶ厚い。それでも紙のサイズが大きいので、神谷哲史さんの「フェニックス 3.0」はこれで折れた。翼の両端間で40cmくらいになったけど。


フェニックス 3.0
創作:神谷哲史,用紙:上質紙 60㎝


■薄葉紙
さすがに毎回出来上がりが40㎝サイズになると置き場所にも困るので、簡単に入手できるもので、できる限り薄いものを探して購入した。いやー、薄いね。薄すぎて折れない。コシが無いんでふにゃふにゃしてる。そもそも、バッグとか革靴とか箱詰めする際に商品を包んで表面を保護するためとかに使われるものなので、固いと商品にキズを付けてしまうからね。それでも頑張って神谷哲史さんの「ミノタウロス」は折れた。


ミノタウロス
創作:神谷哲史,用紙:薄葉紙 35㎝

■スイーツの包装紙
ワックスペーパーともちょっと違うと思うんだけど。バレンタインデーに娘がくれたチョコの包み紙が、12㎝の正方形で薄くてコシがあったので、吉澤章さんの「カニ」を折ってみた。いやー、折りやすかったですな。実はまだ7~8枚残してたりする。


カニ
創作:吉澤章,用紙:ワックスペーパー(?) 12㎝


この辺から神谷哲史さんの「龍神 3.5」に本気で取り組む気になって、頭部の部分折りをしながら、ちょっと真面目に紙を探し始める。

 
■和紙
仕事で出かけた先の近くに東急ハンズがあったので、工芸コーナーの店員さんに折りやすそうなものをいくつか見繕ってもらった。残念ながら雁皮紙は置いてなかった。あっても高くて買わなかったと思うけど。美濃紙とか楮紙とかを買って、龍神の頭部を部分折りしてみた。確かにそこそこ折れるんだけど、未処理のままではやはりコシがなく、特に完成した作品は無し。

■薄葉紙+アルミホイル+薄葉紙
カラペにアルミホイルを裏打ちするってのは良くあるみたいだけど、カラペ自体の入手性がいまいちなので、大量にある薄葉紙でアルミホイルをサンドイッチしてみた。試しに龍神の脚を部分折りしてみたら、まあまあ折れるんだけど、ネットとかでよく書かれているように、一度つけた折り筋の山谷を反転させるときは扱いにくいので、沈め折りとかが多いと大変かもしれない。これも特に完成作品はなし。

■薄葉紙(糊引き)
裏打ちの次は糊引きということで、やはり大量にある薄葉紙を糊引きしてみた。半畳サイズのアクリル板(ポリカだったかも),スプレーボトル,フエキ糊,刷毛を購入。アクリル板に薄葉紙を置いて、水をスプレー。フエキ糊を水で溶いて刷毛で塗り、乾いたら一丁上がり。 簡単な割には効果てきめんで、ふにゃふにゃでコシが無かった薄葉紙にパリッと張りが出て大変折りやすい。というわけで、北條高史さんの「仏像」を折ってみた。出来上がりサイズも高さ16㎝とそこそこの大きさだが、光背部分も紙一枚で自立している。

仏像
創作:北條高志,用紙:薄葉紙 50㎝

■クラフト紙
入手性,価格,用紙サイズの豊富さ,薄さ,強度のすべてにおいて僕のお気に入り。色は薄茶色のほぼ一択なので、本番用ではなく練習用,研究用に使われることが多いみたいだけどね。成り行きではあるんだけど、神谷哲史さんの「龍神 3.5」はこれで折った。パッと見が木彫りの置物みたいなのも気に入っている次第。

龍神3.5
創作:神谷哲史,用紙:クラフト紙(50g) 180㎝

 ■ビオトープ
最近始めたTwitterで、折り紙関連のツィートを見ていると、これを使っている方が多く、見た目の質感も良さそうなので、一番大判で薄手のやつを10色ほど紙の専門店でネット購入してみた。値段も一枚あたり100円ちょっとなので、送料の方が高くついたくらい。 折ってみた感じはクラフト紙とよく似ているけど、質感から想像されるように手触りとかはこちらの方が良い。たまたま同じ厚みで比較できたんだけど、強度はクラフト紙の方に軍配が上がる。普通の複雑系(なんだそりゃ)なら問題なく折れそうだし、色も豊富なので本番用にも良さそう。
というわけで、GW(我慢ウィーク)中に神谷哲史さんの「アカウミガメ」を折ってみた。最初に使う紙できっちり仕上げたかったし、基本格子数に合わせて56㎝角で折ったら、出来上がりが手の平サイズになってしまった。

アカウミガメ
創作:神谷哲史,用紙:ビオトープ 56㎝


糊引きいらずで折れる雁皮紙とか、昆虫作品に向いてると噂のカラペとか興味はあるけど、すでに買ってしまった紙が大量にあるので、そっちを先に使っちゃわないとね。


2020年5月1日金曜日

折り紙と特許:Origami and patent

折り紙の工業利用で有名なものに「ミウラ折り」というのがあって、観光マップや人工衛星の太陽電池パネルを瞬時に折り畳んだり展開したりする構造に応用されている。また、同じく太陽電池パネルでいえば、「川崎ローズ」に代表される平面を円筒状に畳み込む構造もよく知られている。

なんで、こんな話をしているかというと、50年ほども前にこのような構造が、折り紙に関係するものとして世の中に出ていたことについ最近気づいたから。

僕が50年近く前に折り紙に触れるきっかけとなったのは、小学生の頃に創作折り紙の世界的第一人者である吉澤章さん(もちろん当時はそんなことは知らない)の刊行冊子「折り紙通信(創刊時はOT通信)」を見たからなんだけど、久しぶりにあの頃の素朴な作品を折ってみようとPDF化しておいたコピーを眺めてたら、特集記事と思われるページに下記のような写真が載っていた。


吉澤章による絞り構造(掲載号の記録無し)

残念なことに、原本を紙コピーしたものを更にスキャンしてPDF化しているので画質が劣化しまくりだが、平面から襞構造が渦巻き状に折り出されていることが判るだろう。記事を読んでいくと、どうやら創作折り紙で考えていた幾何学構造が、当時、液化ガスを運搬する構造物の補強形状としても考案されており、中にはイギリスで出された特許でも同じようなものがあるとのこと。それが下の写真。


吉澤章によるイギリスの特許構造

「いやいや、ほぼ○○ローズやん」ってことでさらに記事を読んでいくと、なんと国内での特許公開番号が書かれていた。特許情報プラットフォームで「1964-018893」で検索すれば誰でも閲覧できる。

特公昭39-018893,第3図

さすがに、上記写真や特許のように、金属板を完全に鋭角に曲げてしまっては材料が破損してしまい、構造的に成立しないが、ここから発展した平板からの絞り構造は、実際に当時の三菱重工業建造のタンカーで採用されていたらしい。

せっかくなんで、上の特許の構造を折ってみたので、展開図とそのバリエーションを載せておく。

特公昭39-018893を折り紙で再現。完全には折りきっていない

特公昭39-018893の展開図

特公昭39-018893の構造パターン

特公昭39-018893構造パターンの展開図

書いてるうちにだんだん思い出してきたんだけど、確かに子供の頃こういう記事も読んでた。でも、当時の僕にとっては「幾何学的パターンの創作折り紙」なんてのはまったくチンプンカンプンだったし、興味もなかったんだけどね。まさか半世紀ぶりに読んだ折り紙の本の中に、最先端宇宙工学の芽を見るなんて思いもしなかったよ。



吉澤章作品より (かめん):Pick up from YOSHIZAWA Akira works (Mask)

 2年半ぶりに 連投。吉澤章さん「折り紙通信」より「かめん」。仮面と言いつつ、これは顔です。僕には吉澤さんご自身の顔に思えるんだけど。 現代折り紙において顔の折り出しに拘っている折紙作家として北條高史さんが真っ先に思い浮かぶけど鼻や口の造形に近いものを感じる。北條さんよりはだいぶ...