2020年4月25日土曜日

初めの頃は (フェニックス):In the early days (Phoenix)

複雑系をやり出して初期の頃(と言っても、この記事書いてる時点でまだ2年くらいだが)に折った一つが、神谷哲史さんの「フェニックス3.5」。初めに推奨サイズの50㎝を無視して35㎝角の折紙用紙で挑戦したが、案の定途中で挫折。複雑系は重なった部分をさらに折る構造が多いので、紙をうまく逃がしながら折らないと破れてしまう。
最初の頃は、その辺の塩梅がわからなくて色んな紙をネット通販で買ってた。もちろん、大きくて、薄くて、強いほど折りやすい(というか失敗しにくい)けど、初心者はまずはできるだけ大きい紙から始めた方がよさそうな気がする。
というのも、複雑系は細かな部分を折り出すことが多いので、紙がいくら薄くて丈夫でもミリ幅で折るのは大変。厚めの紙でも大きさが十分にあれば、折り寸法誤差が相対的に小さくなるし、なにしろ指だけで折れるから。

というわけで、思い切って90㎝幅の色付き模造紙を買ってきて再挑戦したのが写真の「フェニックス」。造花用ワイヤーでスタンドを作ってポーズを付けてみた。頭部とか脚のカギ爪とか仕上げが甘いし、実は尻尾の途中が完全に裂けてしまってたりする。なので、写真だけ残して作品自体は捨てちゃったんだけど、近いうちに再々挑戦するつもり。紙のことも多少は判ってきたので、何で折るかを考えるのも面白そう。

フェニックス 3.5
創作:神谷哲史 用紙:模造紙,90㎝×90㎝

「紙は細部に宿る」のさっ。




2020年4月18日土曜日

複雑系折り紙への入り口(バイオリン奏者):Enter the Complex Origami (Violinist)

50歳を過ぎてから複雑系・超複雑系と呼ばれる折り紙に遭遇(*)したわけだけど、その中で最初に折ったのが、北條高史さんの「バイオリン奏者(2003年版)」。僕が神谷哲史さんの龍神3.5に挑戦するきっかけにもなった『神谷流創作折り紙に挑戦!―創作アイデアの玉手箱』に掲載されていた。

本当は、その前に同書に掲載されている同じく神谷さんの「カブトムシ」を先に折り始めたんだけど、いかんせん用意した紙がサイズこそ推奨の35㎝だったものの、厚さが結構あって途中で折れなくなったんで、「カブトムシ」の一つ前に載っていたこの作品にトライした。

それでも、初見では折れなくて2回目でようやく完成できた。オリジナルと比べると、頭はでかいし、弓は短いし、首がやたら長いしで完成度は低いけど、「ジャバラ」の強力さが良く分かる題材だった。

北条さんの他の作品もそうなんだけど、カドが単体で手とか脚の構造になるのはもちろん、複数のカドを組み合わせて部分の構造を作ることが多いと思う(「仏像」とかもそうだよね)。だから、展開図折りだけだと、何のことやらさっぱりわからないことが多くて、にらみ折りが不得意な僕は折り図がないと途方に暮れるばかりなんだよね。

あー「暫」が折りたいよう。

バイオリン奏者(2003年版)
創作:北條高史 用紙:上質紙,35㎝×35㎝

(*) 社会人になってすぐくらいに、ミステリー小説『迷路館の殺人』(綾辻行人/著)の中で前川淳さんの「悪魔」に出会ってる。その後すぐに「悪魔」の折り図が載っている『ビバ!おりがみ』(前川淳/著)を図書館で探して折ったんだけどね。イヤーあの時は「不切正方形一枚でこんなのができるんだ」って驚いたんだけど、それきりで終わったんで。

ってか、そもそも悪魔って伝承なんだよね



2020年4月11日土曜日

龍神3.5 ギャラリー : Ryujin 3.5 Gallery


Gallery of Ryu Zin 3.5

Creator : KAMIYA Satoshi
Folder : Bookman
Paper, Size : Kraft paper(50g/m2), 180cm x 180cm











龍神3.5 全体折り (10) : Ryujin 3.5 Entire fold (10)

ポーズを付けて完成する前に遊んでみた。


龍神の一夜干し
 

第二形態
 
ぼうや~ よいこだ ねんねしな~

 

龍神3.5 全体折り (9) : Ryujin 3.5 Entire fold (9)

完成までもう少し。

上半身側とつなぐ前に、ある程度背びれ部を糊付けしていく。その前に針金を埋め込んでおくのを忘れないように。針金は太いのを1本埋め込むより、細めのものを並べて使う方が、捩じるようなポーズを付けるのがやりやすいかも。写真では判らないが、実は胴体を閉じる前に薄葉紙を内側に詰め込んでいる。こうしておくと、胴体が平べったくならず、ポーズを付けた後もふっくらした形を保つことができる。

背びれを糊付けして閉じている途中。肩部の背びれや尻尾部分は作業中にぶつけて形が崩れやすいので、厚紙などでカバーしておくといい

本来上半身側とつながっている部分はすべてジャバラに折り畳まれて胴体内に隠れてしまう。これが龍神シリーズ作品の大きな仕掛けなんだけど、本当によくもこんなの思いついたもんだと思う。上半身側との接続部が表側の胴体より背びれ2枚分短くなっているが、これは上半身側も同じで、それぞれの胴体が背びれ4枚分で重なることになる。神谷さんは、この重なり合う部分を「一旦開いて重ね合わせて折り直す」って書いてるんだけど、僕はそれを読んだとたんに膝から崩れ落ちそうになったんで、あきらめてそのまま糊付けした。


あのジャバラがどこに行くのかと思ったら、こんな風に胴体で全部包み込まれてしまう

内部に埋め込むジャバラ部の中ほどに、ポーズを付けるために、細めの針金を3本並べて埋め込んでいる。糊付け用に表面に紙を巻き付けている造花用のワイヤーが便利。ジャバラ自体は針金を埋め込む場所などを除き、基本的に糊付けはしないこと。でないとポーズを付けるときに曲がらなくなちゃうよ

頭部のディテールを折り込んだところ。このままでは髭や角などがブワッと膨らんだようになっているので、糊付けしてしっかりと形を整えよう

脚先は太くならないようにほっそりした形に整える。爪も細く仕上げるのが良し。ここをサボると太短い脚になってしまい、カッコ良く仕上がらない

左側が仕上げ前,右側が仕上げ後。右側の方が今にも掴みかかろうとしているような精悍さにあふれて見える

くれぐれも、この状態であきらめないようにね


頭部、脚部等のディテールは出来上がった作品の印象を大きく左右するので、出せる力を全部出し切ろう。余裕があれば、この段階で部分折りの記事も参考にして、練習し直してみるのもいいだろうね。


2020年4月5日日曜日

龍神3.5 全体折り (8) : Ryujin 3.5 Entire fold (8)

紙の厚みとの戦いの一つである肩‐脚部の90度捻りについて解説する。展開図通りに肩‐脚部を折り出した時点では、同部は2本の脚が胴体の前後方向に平行になっているため、これを90度捩じらなければならない。肩‐脚部と胴体側の間には96分割格子で1マス分の高さしかなくて、それ以上に重なり合った紙の厚さが半端じゃない。でも、ここで手を抜くと、出来上がった時の肩‐脚部と胴体の合わせ目が不自然になってしまうので、できるだけ丁寧に折り進めよう。


肩‐脚部と胴体との間には96分割格子で1マス分の高さの接続部があるが、見ての通り40枚以上重なった紙を折らなければいけない。 この部分を

こんな風に90度捩じるわけだ

厚みを逃がすために接続部を半分に分けて、それぞれが重なり合わないようにしている。神谷さんの赤本38ページをヒントにしたので、持っている人は確認してみよう
 
胴体側を閉じた状態。反対側の背びれとの接続部が横倒しになっているが、最終的に整形すると肩部と胴体の段差が小さくなり、見映え的には良くなった。色んな方がこの作品を完成されているが、この部分の出来栄えには苦労された様子が伺える



龍神3.5の展開図も載っている『神谷流創作折り紙に挑戦!―創作アイデアの玉手箱』を持っている人はP.38~39のテクニックを参考にするといいよ。



龍神3.5 全体折り (7) : Ryujin 3.5 Entire fold (7)

神谷さん曰く「龍神を折る作業の半分を占める」という鱗の折り出しに入る。鱗の折り出しは、斜め格子から鱗1枚分の正方形要素に折り直し、さらに正方形要素の角部を沈め折りすることで鱗の細かい形を折り出す。
鱗部は細かな要素が少しずつ重なりながら配置されているため、折線通りに折っても胴体の前後方向に伸びが生じる。そのため、鱗の折り出しは最終的な形まで一気に折り出すのではなく、鱗部全体を正方形要素に折り直した時点で胴体前後方向の長さを確認した方が良い。この時、胴体長さが実際よりもやや短めになっているくらいが望ましい。鱗を完全に折り出してしまうと修正が難しいので注意しよう。
上記の作業は胴体の後方から前方に向かって進めること。部分折りの記事でも書いた通り、逆方向で折り進めると作業の自由度が低くなるよ。

鱗は胴体後方から前方に向かって折り出す。写真では比較のために最後部4列の鱗を沈め折りまで完了しているが、残りの鱗はまず写真上側の斜め格子から中央部の正方形要素に折り直す

下半身全体の鱗を折り出して沈め折りまで完了した状態。この時点で背びれも折り出し、糊付けしておく。鱗の折り出しの際に少し胴体が長くなってしまい、完全に修正できなかったため、背びれを糊付けして長さを調整した状態では鱗がやや波打っている。ちなみに、肩部の背びれは垂直に立ち上がっており、作業中に色んな所にぶつけてヘタリそうだったので、厚紙で作ったガードで保護している

背びれ,腹部の蛇腹4列分は上半身側と重なり合うため、この部分の鱗は完全に折り出す必要はない。ただし、斜め格子のままだと厚みが大きく、重ね合わせが部が不自然になりそうな気がしたので、正方形要素に折り直した上で、各要素の重なりを工夫して厚みを抑えた。また、重なり合う部分の背びれは内側に折り込んでいる


龍神3.5 全体折り (6) : Ryujin 3.5 Entire fold (6)

胴体鱗部のジャバラ折りをもう一段階進める。本来は下図の部分折り写真のように胴体部の全体を折り直すんだけど、この次の斜め格子折りの段階でこのジャバラは解体されるため、本番では写真右側の内部構造との遷移部のみ折り直すことにした。



胴体ジャバラの部分折りを練習したもの。本番では写真右側の内部構造との遷移部のみを折り直したが、その前に部分折りで十分に練習して、斜め格子折りまでの手順を確認しておこう

内部構造との接続部のジャバラを折り直したところ

内部構造との接続部はこんな感じ。右端は尻尾になる部分なので細かいジャバラ折りはしない

更に進めて、鱗を折り出す一歩手前の斜め格子まで折り進める。斜め格子を折り出すためには鱗5列分くらいを一度に折り直していかなければならない。画面下側の背びれ部は紙の縁にあたるため折りの自由度が高いが、反対側の内部構造との接続部は自由度が低く、丁寧な作業が必要になる。尻尾の折り出しもこの段階で完了する。

斜め格子の折り出しの途中。V字型に折り込まれて、腹の蛇腹部分が後方に出張ったようになっているが、更に逆V字型に折り込むことで左側のような斜め格子ができあがる

斜め格子と尾部を折り出したところ。中央の部分折りパーツは尾部の折り畳み方を検討した時のもの。オリジナルとは違う畳み方になっているが、一応、完全に平面内に折りこんでいる

【追記】
Twitterで龍神3.5に挑戦中の方が、鱗の斜め格子を別の方法で折ってた。というか、その方の折り方の方が自然だと思うんだけど。僕は上の手順で、V字型,逆V字型で折ったんだけど、まずV字型に折る時に腹の蛇腹部分がどんどん突出して折にくいことこの上なかった。Twitterで知り合った方は、腹部をまたいで一方向に斜めのジャバラを折り出し、その後でこれに直行するように斜めのジャバラを折っていた。

部分折りで比べてみることにした





左がTwitterで知り合った方,右が僕の折り方のイメージ。見た目は右側の方が整ってるように見えるが、どうせ1枚づつの鱗に折り直すので、そんなことはどうでもいい

部分折りで比べてみたところ、周辺部の拘束がないため極端な差はなかったが、僕の折り方よりも折り方が自然で、用紙の一部が極端に歪むこともないので、圧倒的に折りやすいことが判った。これから挑戦する人は、ぜひこちらの手順でどうぞ。




龍神3.5 全体折り (5) : Ryujin 3.5 Entire fold (5)

脚部を折り出したら、胴体部のジャバラを折り畳んでいく。ジャバラ部はいきなり192分割の幅で折り畳むのではなく、その2倍および4倍の幅で下図上側のように互い違いに折り畳む。破線の間隔が192分割の幅である。この際、胴体鱗部から内部構造への遷移部では、一時的に展開図にはない折線で折ることになる。いや、鱗部全体がそうなんだけど。


胴体部のジャバラは、まず上側のように192分割の2倍幅,4倍幅で互い違いに折り畳み、その後下側のように192分割幅,2倍幅で折り直す


192分割の2倍幅,4倍幅で互い違いに折り畳んでいる途中。肩‐脚部付近は分割幅の遷移が急なので、左側のような有様になってしまった。肩‐脚部とバランスとりながら折り進めればいいんだろうけど、初見ではこれが精一杯だったよ

胴体部ジャバラの互い違い折りを終えたところ。上のシッチャカメッチャカな状態からこうなるんだよなあ

肩‐脚部からの遷移部。きっと、簡単に折る手順があるんだろうけど、展開図から無理やり折ってるもんで、ここも本当に難しかった(だが、それがいい)


吉澤章作品より (かめん):Pick up from YOSHIZAWA Akira works (Mask)

 2年半ぶりに 連投。吉澤章さん「折り紙通信」より「かめん」。仮面と言いつつ、これは顔です。僕には吉澤さんご自身の顔に思えるんだけど。 現代折り紙において顔の折り出しに拘っている折紙作家として北條高史さんが真っ先に思い浮かぶけど鼻や口の造形に近いものを感じる。北條さんよりはだいぶ...